ヤビキ沢
寝不足の日々が続いています。
もちろんワールドカップのせいです。
このサッカーワールドカップの魔力ってなんだろうね。
にわかサッカーファンが急増する。
オイラもスポーツ観戦は好きだが、普段は夜中までTVにかじりついたりはしない。
ウチの奥様だって普段スポーツなんか全く見ないくせに、大いに盛り上がって見てますから。
しかも、チームや選手の情報にやたらと詳しい。
『大迫ハンパ無い』の由来だとか、モロッコのイケメン監督の白シャツがどうたらとか、セネガルチームはほとんどの選手が実はフランス人であるとか・・・。
そのくせ、サッカーのルールはまるで知らないので、一緒に見ている方は大変だ。
ペナルティキックだとかオフサイドトラップだとかを、ルール知らない人に説明する難しさっていったら・・・
ホント、メンドクサイったらありゃしない。
その極みは「何故、手に当たったら反則なのか」と言い出した時だ。
「そういうルールだから」としか言いようがない。「足で蹴るのがサッカーなんだから。」
でも、彼女は食い下がる。「頭や胸はOKなのに、腕だけダメなのは何故だ。」「掴んだり、投げたりしたらダメだろうけど、腕に当たるだけならいいのでは。」
知らねぇヨ!
そういうスポーツなんだよ!!
さて。
そんな寝不足の中ですが、今週もまた西丹沢を歩いてきました。
2018年6月24日
先週行かなかったモロクボ沢・水晶沢へでも行くか・・・と思っていたのですが、朝起きると雨。
明け方には止んでいる予報だったはずなのに・・・。
天気サイトをチェックすると11時頃まで降る予報に変わっていた。
それでも、せっかくの休日だし、雨が止むのを待って、のんびりとショートコースを歩いてこようと、ゆっくりと朝食をとってから西丹沢へ向かって出発する。
西丹沢VCへ到着したのが、10時前。直前まで降っていた雨も、どうやら止んだようです。
ショートで回れるヤビキ沢へ行ってみる事にしました。
支度を整えて、10時に出発します。
登山道を45分ほど歩くとゴーラ沢出合。
ここからゴーラ沢へ入ると堰堤の巻が厄介なので、一旦つつじ新道へ入ります。
標高800m付近で、登山道から離れ、右手斜面に付けられた踏み跡に入ります。
以前は獣道程度の踏み跡でしたが、ずいぶんとくっきりしたトレースになっていました。
ここを辿ってゴーラ沢へ降りる人も増えたって事だろうか。
ゴーラ沢へ降り立ち、遡行開始です。
相変わらずガラガラとした沢です。
10分ほど歩けばヤビキ沢出合。
両方ともゴーロの沢ですが、左がゴーラ沢本流。右がヤビキ沢です。
さあ、久しぶりのヤビキ沢。5年振り3回目。
少し歩けば、西丹沢一との声もあるナメ床が始まります。
いやあ、何度見ても美しい渓相だ。
だけど、今日はヌメリが酷い。
最初のナメが終わって、再びゴーロ。
倒木が沢を塞いでいた。越えるのがちょっと厄介。
それにしてもヌメリが酷い。例年、梅雨に入れば雨でヌメヌメが洗い流されるはずなんだけどな・・・。
このナメ滝は、普段なら靴のフリクションで簡単に登れるのですが、ヌメヌメしていて怖い。
右手の乾いた岩を登って越えようとしたのですが、ちょっとルートどりに失敗したか・・・。途中のスタンスが微妙でえらく苦労してしまった。
ナメ滝を越えた所で、前方からパーティが降りてきたのでビックリする。
この沢の源頭部はどこも急傾斜の岩場で簡単に下降できるような場所は無いはず。
いったいどこから降りてきたんだろう。
すれ違いざまに聞いてみると、F1まで行って引き返すところなんだとか。
挨拶しながら、「今日はヌメリが酷いですね」と言うと、「僕らは沢靴履いてるから」と言われてしまう。
オイラも一応、ファイブテンのステルスラバーなんだけどね・・・
そうか。フェルトなら、こんなヌメリでもへっちゃらかぁ・・・。
スキルの差もあるのか知んないけど・・・
990mの二又が見えてきました。
本流は左ですが、この先は傾斜が増して、クライミング地帯になる事は経験済み。
今日は出発も遅かったし、まったりムードで、岩場をガシガシと登るようなテンションでは無い。最初から、この辺で適当に逃げるつもりでいました。
本流にかかるF1 10mの下で休憩しながら、この後のルートを考えます。
そうだ・・・右の支沢へ入ってみよう。
もちろん、右の支沢の源頭が崩壊地で崖状になっていることは知っています。石棚沢の右岸尾根を下りながら、様子は見ていましたから。
右の支沢から、適当な所で右手の尾根に上がろう。そのまま石棚沢右岸尾根を下降して帰ろう。
地形図を眺めながら、1090m辺りの尾根を登るのがいいか・・・なんて考えます。
時刻は11:50。ショートコースとしてはちょうどいい。
・・・と、この時点ではまったりムード全開ですが、この後えらいことに・・・。
990m二又から、右の支沢へと入りました。
ガラガラとしたゴーロの沢です。
源頭部までこのままゴーロが続くのかもなぁ・・・なんて思いもしましたが・・・。
あにはからんや、ナメ床が現れました。
少ないながら水流もあります。
おおっ! なかなか良いじゃん。
と思いましたが、沢幅が狭まってゴルジュになってきたのが一抹の不安。
変な滝が出てこなきゃいいけど・・・。
厳しい滝ではないけれど、滝場と言えば滝場。
傾斜はさほどでもないが、微妙な逆相なうえに、相変わらずのヌメヌメ。
ちょうどここが、地形図を見ながら検討した1090m付近のようです。
ゴルジュの真っただ中。登ろうとしていた尾根の取りつきは崖状です。
どうする?
このまま、ヌメヌメ滝を我慢で登る?
地形図を見る限りでは、この先に適当そうな尾根は無い。源頭部の崩壊崖を登るはめになる恐れもある。
行き詰って引き返しで、こんなヌメヌメの滝を降りてくるってのもヤダしなぁ。
予定通り、この尾根に這い上がるか・・・。
取りつきは崖状だけど、この程度ところは過去何度も這い上がっている。
10mか20mも這い上がれば、普通の尾根になるはずさ。経験から言うと、たいていそうだった。
そして、右手の尾根に這い上がり始めます。
10mほど上がった所で、ちょっとやばいかも…と思った。
大きな岩が多く、足場は豊富にあるように見えたのだが、その岩が全部不安定なんだ。
岩に体重を乗せられない。かといって泥もグズグズ。
登り始める前に、チェーンスパイクを履いておかなかったのはウカツだった。
ザックのサイドポケットから、スリングも出しておくべきだった。
樹が生えていればラッキー。なければ樹の根をまさぐりながら這い上がる。
20mほど上がってようやく傾斜が緩む。(と言っても、まだ45度くらいはありそう)
やれやれ・・・ようやく二足歩行で上がれる・・・
と思ったのも束の間。
マジか・・・
右手は絶壁。左手にかすかな突破口を見つけたが、こんな所で途中でセミにでもなったらアウトだ。
何度も何度もルートを目で追い、ホールドスタンスを確認しながら登った。
冷や汗ものだった。・・・が、これで終わりではなかった。
ガリガリのヤセ尾根が続く。
右も左も絶壁だ。
人どころか、獣でさえも入って来ない尾根なんだろう。
転がっている岩が全て浮石であることからも、その事がわかる。
一瞬も気が抜けない。
絶句。
岩の右手をトラバースして、岩を越えた所で泥斜面を這い上がる。
が、途中で掴まる樹が無くなり行き詰る。
こういう場所の登りは、ホールドが一番大事。片手でもしっかり掴まれるものが確保できれば、多少スタンスが悪くても身体を引き上げられる。逆に言えば、ホールドが不安定のままで身体を引き上げるのはリスクが大きい。
ここは絶対に失敗できない場面。『えいやっ』で登る事はできない。
地中に手を突っ込み、樹の根を探る。
樹の根を掴んだら一歩上がる。それを何歩か繰り返す。
登り切った時には、心身ともにヘトヘトだった。
今まで、いろんな尾根を歩いてきたけれど、この尾根のシビレ度はトップクラスだ。
考えてみれば、このヤビキ沢周辺の尾根はみなそうだった。急斜面の岩尾根。
その中でも、ここはガリガリに痩せているから、逃げ場がないんだ。
1320m付近で、石棚沢右岸尾根に乗った時には、心底からホッとした。
15時ちょっと前には西丹沢VCに帰還しました。
結果、予定していた時間通りに戻ってはきたけれど、「今日はのんびり散歩」と思っていたのとは正反対の冒険山行になってしまいました。
はたしてあの場面(ヤビキ沢1090m)で、どういう選択をすべきだったのか・・・。
あのまま沢の遡行を続けていれば正解だったのか・・・というのもピンとこない。
安全第一で考えるなら、ピストンで沢を下降する事だったのだろうが、それは無いな。オイラの性格から、その選択肢はまず無い。
990mまで戻って界尾根?
一度歩いて、キツイ尾根であることを知っているから、それも無かったろう。
じゃあ、990mから右手の支尾根?
その選択肢はあったかもしれないが、その尾根だってどういう尾根だかわかったもんじゃない。
今日の尾根が危険尾根だったって事も結果論だ。歩いてみなきゃわからない事。
でも、ヤビキ沢周辺の尾根が危険含みって事は、予想できたはず。
少なくてもまったりモードのモチベーションの時に歩く尾根では無かったか・・・。
と、反省はしたものの、終わってみれば「なかなか面白い尾根だったな」なんて思っている自分が怖い・・・。
| 固定リンク
コメント