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2013/11/19

織戸峠~富士見峠

西丹沢の世附と呼ばれている広大な山域に、かつて地蔵平と水ノ木という二つの集落があった。二つの集落は富士見峠・織戸峠という二つの峠を越える道で繋がっていた。材木を積んだ荷馬車が通れるような立派な道であったらしい。

というのは、丹沢マニアの間では有名な話だ。
でも、廃道となって長い年月が経つこの道の全容を解明した人は、そう何人もいないんじゃないかな。

現在は地蔵平から上法行沢までと水ノ木から織戸沢700m付近までは林道が通っている。両方とも富士見林道という名称だから繋げる計画はあったのだろうが、ボコボコで車が通れる状態じゃない廃林道だけれど。

でも、林道と旧経路は一致しないだろう事は簡単に予想できる。
いつかは旧経路を踏破してやろうと、長年胸に温めていた。

世附山域探索の先駆者でオイラも大師匠とあがめるS-OKさんの記録を頼りに、織戸峠~上法行沢の間を探索したのは、もう何年も前だ。
織戸峠~水ノ木間で、林道と織戸沢の間の斜面に経路痕を見つけたのが2010年の3月だった。
地蔵平~富士見峠間は、P878を通る尾根ルートは有名だが、本来の旧道は沢ルートだったらしい。イデン沢・富士見沢と辿る経路痕を探り当てたイガイガさんの記録を後追いする形で2011年11月に歩いてみた。予想通りの危険を伴う探索だった。

残るは上法行沢~富士見峠までの探索だ。
織戸峠から上法行沢まで降りてきて、そこからP803の北のコルまでは経路痕が残っている。
一般的にはコルからそのまま尾根伝いに富士見林道へ上がって、林道を辿って富士見峠へ向かうのがルートだとされていた。
が、絶対に旧道は林道と一致していない。林道と法行沢の間に経路があるはずだと思っていた。
しかしP802北のコルの東斜面は猛烈なヤブで、経路痕は見つけられなかった。富士見峠から法行沢の源頭部を眺めても、ザレた急斜面ばかりで経路痕は見当たらない。手がかりが無いままだったが、2年前にイガイガさんが解明された。やはり林道と法行沢の間の斜面に旧経路はつけられていたのだ。

これは後追いしなきゃと思いながらも、なんだかんだで延び延びになってしまっていた。
そのうちに思いも薄れてきてしまい・・・なにせ廃道探しは地味な山歩きだからねぇ・・・。
ところが先日EAさんがここを歩かれた。その記事を読んで、再び廃道探索の思いがよみがえってきた。
先々週の大山鉄塔巡りの時にEAさんから詳しいお話を伺って、「織戸峠~富士見峠の旧経路を踏破しなきゃ」という思いが強まって止められなくなってしまった。

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2013年11月17日

浅瀬を基点にして回るか、細川橋基点で二本杉峠経由にするか迷った末、久しぶりに椿丸の訪問も絡めて浅瀬を基点にする事にした。

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AM8:00 浅瀬ゲートの500m程手前にあるトイレ付Pに車を停めてスタート。
久しぶりに浅瀬のゲートを越える。

2010年の台風で壊滅的になってしまった世附の林道だが、少しづつ復旧工事は進んでいるようだ。

さて、まずは椿丸へ登る。
もう何回も登っている椿丸だが、未踏の登攀ルートを探せばまだまだいくらでもある。今日は笹子沢左岸尾根からP838経由で登る事にする。

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8:40 大又林道が笹子沢に架かる橋に到着。
笹子沢左岸尾根の林道際は、ずっと崖地になっている事は知っていた。どこから取りつこうかと歩きながら考えていたが、いったん笹子沢に入り、沢沿い斜面の弱点を見つける方法が良いかもと思っていた。

右岸側の橋の手すりを越えると、すぐに経路が目に入った。
もしかしたら上流に有るであろう東電の取水口(地形図に青破線が横切っているから想定できる)へ向かう経路かも・・・と思い、経路を辿りはじめる。
が、予想に反して経路はどんどん沢から離れた方向へ向かう。
「あっ、これはP795へ向かう林業用の仕事道かも」と思い直して、経路から離れ沢へ向かって山腹をトラバースする。が、斜面が急すぎて沢に降りられない。
ロープを出して、なんとか沢へ降り立った地点は、橋から50m程しか離れていなかった。
橋から15分もかかってだ・・・。
なにアホやってんだか・・・。

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左岸尾根の弱点を探しながら、しばらく沢を上流へ歩いていが、ゴルジュっぽくなってきた。
水量は少ないし沢靴なら楽勝だろうが、登山靴だと苦戦は必至だ。この先長いし、靴は濡らしたくない。
仕方ない。ここで山腹をよじ登るか・・・。

と、取りついた斜面はかなりの急斜面。ぐずぐずで岩混じりで、一番やらしい斜面だ。
そんな所を7~80mは頑張った。

しんどかった・・・。

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傾斜が緩んだ所で、トラバース気味に歩き、P586北のコルに立つ。

ここからは楽々尾根歩きだ。
しんどい登りも数か所はあったけれど・・・。
初めての尾根を堪能しながら歩く。

P838からは何度も歩いた、おなじみの椿丸稜線だ。

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10:45 久しぶりの椿丸山頂。

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山頂の西側の展望地で休憩。
ここは本当に気持ちの良い場所。
正面に見える尾根は菰釣山から伸びるシキリ尾根だ。あそこもまだ未踏の尾根。そのうち行かなくっちゃ・・・。

11:00 織戸峠へ向かって出発。

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11:20 いつきても静かな織戸峠。
『忘れ去られた古道』という雰囲気がたっぷりだ。

さあ。

ここからが今日のメインイベントだ。

峠から経路痕を辿る。
ここから上法行沢までは、今日で4回目だ。どこが崩壊しているかもだいたいわかる。

まずは峠から1つ目の崩壊地。ここは楽勝だ。

そして二つ目の崩壊地。以前は何とかトラバースできたはずだが、見た瞬間にヤバイと思った。

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結局10~15m程高巻して、経路に戻る。そして振り返って見た写真。
白ザレがむき出しになった崩壊斜面はホントにヤバイ。滑り出したら止まらないからな。

この後はそれほど危ない個所は無かったように記憶していたが、危険な崩壊箇所がさらにもう1か所増えていた。

もっともここを歩くのは3年以上ぶりだ。その間に台風や豪雨もあったし、経路の崩壊は進行しているんだろう。
オイラが初めてここを訪れたのは、まだV歩きを始めてまもない頃だった。当時はその程度のレベルでも歩けた(ずいぶん冷や汗もかいたけれどね)。
現状ではかなりV馴れしてる人じゃないとしんどいかも。

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経路は上法行沢へ降りた地点で消える。
かつては橋がかかっていたんだろうけど、それがどこかは今となってはわからない。

適当にわたりやすい場所で沢を横断して、対岸の斜面を登る。
少し登れば再び2m幅のくっきりとした経路痕を見つけられる。

経路は山腹を斜上して、P803北のコルへ登る。

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11:55 コルへ着いてびっくりした。
以前のここは、背丈を超す萱がビッシリと生えたヤブだったんだ。
今は枯れた萱がパラパラと立っているだけ・・・。
近頃、西丹沢の萱の藪の衰退があちこちで見られるが、ここでもやっぱり。

さあ、ここからだ。ここから富士見峠までが未知の未踏区間だ。

踏み跡は、尾根の背を富士見林道へと向かっている。
が、旧経路はこのコルから水平もしくは下降気味につけられているはずだ。

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EAさんから伺った話通り、旧経路らしき跡はすぐに見つかった。
杉の枯れ枝に埋もれているが、明らかに経路痕だ。獣道なら、こんな幅広で付く事はない。

それにしてもこんなくっきりとした経路痕なら、以前に探索した時に見つけられていたはずだ。きっとその時は激ヤブに埋もれて、コルからは見えなかったのだろう。

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とにかく経路を辿る。
途中こんな石柱が立ってたりもする。よくわからないが営林署の石柱だろうと思う。
これも、ここが経路であった一つの証拠だ。

が、廃道探索がそんなに楽勝ですむわけがない。
大方の廃道がそうであるように、沢筋を横断する地点では必ずと言っていいほど経路は消えている。さらに廃道となって長い年月が経つこの道では、沢筋だけでなくいたるところで消えてしまっている。
ズタズタに途切れて、もはや道とは言えないような状態だ。

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道が消えている崩壊斜面では、トラバースできる所を探しつつ、斜面の上や下を行ったり来たりして、経路の痕跡を探す。
するとほら、また立派な道幅の経路が必ず見つかる。

そんな事を何度か繰り返すうちに、だんだんコツもわかってきた。
この経路は、富士見峠へ向かってちょっとずつ高度を上げているんだ。
痕跡が途切れた場所から先は、少し上目を探す。少し上へ上がりすぎたかなァと思っても、上から斜面を見下ろすようにした方が、経路痕が探しやすいんだ。

そんなこんなで、経路痕を辿った。

割合にして半分くらいが崩壊斜面のトラバースだったけどね・・・。

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もうそろそろ富士見峠に辿りついてもいいんじゃないかと思った頃、上を見たら10m上が林道の擁壁だった。

この辺で岩盤むき出しの沢の源頭にぶつかる。
もうここらが限界か・・・とも思ったが、イガイガさんが見たという鉄の杭がまだ見つかっていない。もう少し我慢して斜面をトラバースする。
が、傾斜がきつくなり、ザレもひどくなって、さすがに身の危険を感じるようになってきた。
少しだけ上にあがろうと小尾根を這い上がる。すると5m程上がった所で、林道に飛び出してしまった。

んんん・・・ここはどこだ? と、右手に少し進んだら富士見峠だった。
富士見峠まで後数十mの所まで、旧経路を辿る事ができたんだ。

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12:35 富士見峠に到着。
倒れたままの富士見峠の道標。
初めてここを訪れた5年前には、まだ道標とわかるくらいだった。
今ではもう、ただの朽ちた木だ。
ここが富士見峠であった証拠の道標も、あと数年もすれば自然の中に溶け込んでしまうのだろう。
それは経路も同じだ。人が歩かなくなって年月が経てば、道型も自然の中に溶け込んで消えていく。
その前に何とか歩けて良かった。
何回かに分けてだけれど、これで地蔵平と水ノ木を結ぶ旧道を辿る事ができたわけだ。

とにかく満足感でいっぱいです。

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家へ帰ってからロガーの軌跡をチェックしてみましたが、織戸峠~富士見峠の間をかなり忠実に辿れたのではないかと思います。

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帰路は未知尾根下降を楽しんで…ってことで、井戸沢と長尾沢の界尾根を降りることにする。
富士見峠林道がP936の南を回り込んだ場所から尾根に入る。

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大半が植林ではあったが、なだらかで穏やかないい尾根だった。
穏やかな割には分岐が多く、地図読みが好きな人なら楽しく降りられる尾根だ。

700m付近からは急斜面になるが、植林のフカフカの地面だから気持ち良く降りられる。

法行沢林道へ降りる末端は、地形図と尾根の雰囲気からみて崖になってる気がしたので、早めに左手の井戸沢へと降りた。

井戸沢から林道へ出たら、案の定尾根の末端は崖。カンが冴えていた事にまた満足。

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13:35 法行沢林道へ降り立つ。
ここから浅瀬まで、のんびりゆっくり歩いても1時間半はかからない。

林道にはユンボが停まっていた。3年前の台風でボロボロになったこの林道でも修復工事が始まったんだ。
林道が復旧すれば、また釣り師も入るしハンター達も入ってくる。誰にも会わない静かな山歩きができるのも、今のうちだけかもね。

などと思いながらユルユルと林道を歩く。

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紅葉を楽しみながら・・・

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そして林道脇にはリュウノウギクが花盛り。

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名残のリンドウも。
これが今年の野花の見納めになるかもなァ。

オイラ、他の人達が言うように、長い林道歩きも嫌いじゃない。
緊張感から解放されて、のんびりと歩くのもいいもんさ。

…って事は。
やっぱり単独のバリエーションでは、相当緊張してるんだ。
ノーテンキなオイラだけれどさ・・・。
今日もザレ地トラバースの連続で緊張感MAXだったけど、本当に充実した山歩きだった。

 

 

今日の蛇足

スマホの『山旅ロガー』でとっているログを、ようやくPCへ取り込む事ができました。
アドバイスを下さった皆様。ありがとうございました。
どうやらスマホのストレイジに保存したデータを、外部から読み取れないようにブロックする機能が原因のようでした。(この機能は機種によって違うのでしょうが)
データをメールにしてPCへ転送する事で、カシミールに読み込ませる事ができました。

ついでにわかった事
オイラの使ってるSHARPの機種には『エコ技モード』という電池を節約する機能が付いています。この機能をONにしていると、ログがまともにとれません。
原理や仕組みはわかりませんが、ロガーを起ち上げた時には、『エコ技モード』は絶対にOFFにしなければいけません。

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コメント

shiroさん
織戸峠~富士見峠間の旧径路探索踏破、やりましたね。こんなに早く行かれるとは思いませんでした。私は水ノ木~織戸峠間の旧径路探索は早々に敗退してしまい、結局織戸沢の遡行になってしまいました。shiroさんに勇気づけられ、そのうち再度旧径路の探索に出かけてみようと思います。

投稿: EA | 2013/11/21 12:49

EAさんこんばんは。
EAさんの記事に背中を押されて行ってきました。
おかげで踏破はできましたが、やっぱりイガイガさんやEAさんの記録を読んでいなかったら難しかったと思います。
廃道探査は1回で上手く踏破できる事は、まれですよね。
織戸沢の旧経路は、沢へ降りる踏み跡のずっと上です。鹿ネットに沿って急斜面を登り、緩斜面になったあたりで水平に伸びる経路痕があると思います。とても薄い痕跡ですが、EAさんなら見つけられるはずです。林道の20mくらい下です。

投稿: shiro | 2013/11/21 21:32

shiroさん、お疲れさまでした。
岩盤の鉄棒、わかりませんでしたか?
林道が見えている写真のちょっと先だったと思いますけど。
もしかして、早く林道に上がりたくて、
上ばかり見てたんじゃないですかぁ~(笑)

今度は富士見歩道完歩、期待してます。
緊張感、さらにMAXかと思いますが、
難易度を下げる仕掛けをしてありますので、
ぜひ、チャレンジしてみてください。

投稿: イガイガ | 2013/11/22 11:09

イガイガさん、こんにちは。
今回行くにあたって、イガイガさんの過去記事を何回も読んで、旧道のイメージを頭の中に作ってから行きました。
鉄の棒は林道が見えてからのちょっと先でしたか・・・。
あの辺では岩盤むき出しの沢の源頭を、どうやって通過するかでイッパイイッパイでした。
 
富士見歩道もまだ完全踏破はしていませんから、行かなくてはいけませんよね。
緊張感さらにMAXですか・・・
んんん・・・
イガイガさんの“仕掛け”を信じてチャレンジしてみます。(笑)

投稿: shiro | 2013/11/22 16:04

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