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2012/05/28

オバケ沢林道

ちょっと前の話ですが。
レガーさんから昔の丹沢、S30年代と40年代のガイドブックをお借りしたんです。
昔の登山ルートや沢の事、感心する事や驚く事、いろいろと楽しんで読ませていただきました。
印象深かったルートガイドの一つが『オバケ沢林道』。札掛からオバケ沢を経て、日高へ抜けるルートです。オバケ経路とも呼ばれています。
今となっては知る人ぞ知る、このルート。去年、M-KさんやAYさんと径路痕を探した事を思い出しました。五町歩沢までの前半部が未踏であったことも、通しで歩きたいと思っていた事も、思い起こしながら読んでいたのです。
そこで、ある事に気がつきました。オバケ沢から先のルートの事です。
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これがガイドブックに載っていたルート図です。札掛から上ノ丸を通って、長尾根(長尾尾根)の北斜面をトラバースしながらオバケ沢へ降りています。
問題はその後。しばらくオバケ沢沿いを遡上して、“堰堤”と記された地点から三角ノ頭(寿岳)へ向かって登って行く。そして山頂の南を巻きながら日高へ至っている。文章でも『沢を20分たどる』『堰堤の上でオバケ沢を離れ、右に山腹を登る道にはいる』と書かれている。

これを読むまでは、オバケ沢へ降りた後、対岸の尾根(三角ノ頭の真東の尾根)に付けられた『日高経路』と呼ばれている仕事道につながるのだと思っていました。が、そうではないようだ。

これは・・・。

オバケ経路が崩壊して廃道となったのはだいぶ昔の事。ここ数年で、S-OKさん、マシラさん、イガイガさんという丹沢Vルートの達人が札掛からオバケ沢までのルートは解明して歩かれているが、その先の堰堤から三角ノ頭へ上がるルートは歩かれていないはず。
ちょこっとググってみましたが、このガイドブックに載っているオバケ沢林道を通しで歩いた記録は見つかりませんでした。(もしあったら、ゴメンなさい)

それならば・・・

行くしかねェだろ。

ちょうど、オバケ経路の探索を考えられていたyamajinnさんをお誘いして。Yoko2さんとraeさんも加わって。

行ってきました。オバケ沢林道。前置き長くてゴメン。

Tizu18

2012年5月19日

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7時20分 札掛に車を停めて出発です。

今日のメンバーはyamajinnさん、Yoko2さん、raeさん。と、僕の4名。
珍しいパーティ構成でしょう。raeさんとは去年モロクボ沢でバッタリお会いした事がありますが、一緒に歩くのは初めてです。

丹沢ホームの横から長尾尾根の登山道に入り、上ノ丸のピークを巻いて金林(キンヘイシ)ノタルに8時20分。

さあ、ここからオバケ経路に入ります。
yamajinnさんとraeさんは4ヶ月ほど前にここから五町歩沢まで歩かれている。

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yamajinnさんを先頭に経路跡を辿ります。
クッキリと道型が残っている場所もありますが、大半はウッスラ。中には完全に崩壊して痕跡すらわからない場所もある。
一度歩かれているyamajinnさんのリードだから、順調に歩みを進めますが、じゃなければ経路痕の見極めにかなり時間がかかる事でしょう。

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前方の木々の隙間から滝が見えてきた。五町歩ノ滝だ。
旧経路は五町歩沢の右岸尾根を滝の落ち口の上に巻き上がっているのだと思うが、ここは尾根を下って滝壺へ降りる。
もちろん、滝を見物するためだ。
久しぶりに訪れた五町歩ノ滝。何度見ても美形の滝だ。S-OKさんが『貴婦人の滝』と呼んだのがうなずける。
落差も10数mしかないし、水量もそれほど多いわけでもない。
でも、なんか良いんだよなァ。

ひとしきり美滝を堪能したら、左岸の小尾根を攀じ登る。途中、右手の涸沢の対岸に径路痕を確認しつつ、そのまま登って落ち口に出る。そしてここで小休止。
この落ち口から10mも登らない場所がこの沢の湧水地だ。
そして湧水地点付近の右岸に経路痕が有る事を確認する。
旧経路は滝の落ち口から10m上で五町歩沢を横断し、左岸の小尾根を降りる。そして滝壺へ降りる手前で西側の涸沢を横断していた。という事で間違い無いと思う。

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五町歩沢からオバケ沢までは、去年M-Kさん、AYさんと共に2回に分けて探索した事がある。崩壊が激しく、一筋縄ではいかない経路である事は十分承知している。

経路の崩壊は、1年前よりもさらに進んでいるように思えた。
『オバケ沢林道』・・・林道と名付けられていることから、さぞかし立派な経路だったのだろうと想像できる。奥地で焼いた木炭を引いた牛がこの経路を行き来していたとも聞く。
が、そんな面影はもう微塵も無い。かすかに経路らしき痕跡が、飛び飛びで現れてくるだけだ。

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ここを歩くのも2回目だから、こんな場所をトラバースしながらも、気楽にズンズンと進める。
ここが経路跡で間違いないという確信を持っているからだ。

「本当にここでよいのだろうか?」と思いながら、「あの尾根を回りこんだ先、崖になっていたりしないだろうか?」という不安と戦いながら歩く、初見の廃道歩きは精神的ストレスとプレッシャーがハンパ無い。

2回目であろうが3回目であろうが危険なトラバースである事は変わりないが、先を知っているという事はそれだけでかなり気が楽だ。

初めてのyamajinnさんYoko2さんraeさんは、そんなストレスを持って歩いていたのだろうけどね。

こういう廃道歩きでは、沢の横断がもっとも危険で神経を使う。
それでも大棚沢手前の小沢と大棚沢左俣は、なんとか渡る事ができる。細心の注意は必要ではあるが。

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この経路の最大の難関、大棚沢右俣に到着した。確かに経路であった証拠、保安林の黄色い標識が立っている。もう『保安林』の字も読めなくなってはいるが。

沢を渡った向こう側はほぼ垂直の岩壁。かすかにバンドはある。でも、その先は崩壊激しい急斜面ルンゼ。
イガイガさんはここをトラバースしたらしい。とり付いてみりゃ、なんとかなるのか?

いやいや。はなっからこんな所をトラバースする気は無いよ。
皆にもそう伝える。「僕の技量じゃ、ここはトラバースできない」と。そして、20mほどの下巻きをすると。
それだって、決して安全な巻ではない。 でも、高巻きはもっと危険そうだ。

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まずは右岸の崖のような斜面を10m程下る。ロープを出そうかと思っているうちにYoko2さんがサッサと降りてしまった。この人の下降テクニックはすごいんだ。以前、小コウゲ南西尾根の崖のような岩斜面を飛ぶように駆け下りるのを見て、舌を巻いた事を思い出した。
それを見て、僕もロープ無しで下降する。
raeさんとyamajinnさんはロープを出して下降。

まあ・・・こういう場所は、ロープを出すのが正解だと思う。サッとロープをセットしてスルスルっと降りる方が、安全だしスマートでカッコいいかも。

そしてさらに沢を10m程下り、左岸の小尾根を這い上がる。
這い上がるポイントはここしかないと思うが、手足総動員の急斜面だ。おまけにむき出している岩はボロボロで手をかけると剥がれる。

20mほど頑張れば経路に復帰できる。

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この先はもう沢の横断は無いので、気が楽にはなるが・・・。
まだまだ危険含みのトラバースは続く。

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こんな土石流跡の横断も苦労するポイント。

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11時25分 オバケ沢へ降り立つ。
金林ノタルからオバケ経路に入って、約3時間。
順調に歩いてきたと思う。

そして・・・。

このルートを通しで歩いた事があるのは、ニカニカ系の人達ではS-OKさんとイガイガさん、MASAHIKOさんだけだ。
ここを通しで歩く事が念願だったんだ。偉大な先輩達に並ぶ事ができた。

でも、ここからだ。

この先、三角ノ頭までのルートを解明して、通しで歩くのだ。
ニカニカ系では初のはずだゼ。

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11時50分に出発。

ガイドブックのテキストに従い、オバケ沢に沿って遡上する。
すぐに左岸に径路痕らしきものを発見。崩れた木桟道などもあり、ここに登山道があった事は間違いないと思う。
左岸の腹の径路痕を追うが、崩れている場所のトラバは本当に危険だった。
素直に沢沿いを歩くよりも倍の時間を費やして、大日沢出合で沢に降りる。

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ここからはオバケ沢沿いを歩く。
綺麗なナメ滝。前、ここへ来たのは2年くらい前だったろうか。
などと懐かしさを感じながら歩く。

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そして石積堰堤に到着。
大日沢出合より上流部に、堰堤はここしか無いはず。ガイドブックに記されている堰堤とはここに違いない。

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ガイドブックの記述に従い、左岸から堰堤の上へ出て、そのまま山腹を斜上する。
少し上がった所で経路痕を発見。ケモノ道くらいのウッスラとした跡ではあるが、Yoko2さんも「人が作った道に違いない」と言う。

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ほら、もうここなんか、こんなクッキリとした道型がある。
ここがオバケ沢林道であった事は間違いないゾ!

と喜びながら急斜面の尾根を登っていく。

山頂が近くなってきた所で、ガイドブックの地図どおり、山頂の南斜面に径路痕は向かっている。
が、この三角ノ頭の南斜面は大崩壊地帯だ。そこは絶対に歩けない。(いや・・・以前、AYさんがここの崩壊斜面をトラバースしていたような気がするが・・・)
もう、ここまで来れた事で満足している僕らとしては、素直に尾根を登って山頂へ向かう事にする。

三角ノ頭に1時半に到着。

満足です。

休憩した後、下山に入ります。

なんか気分的に、このまま仕事道を辿って本谷林道に降りるのもつまらない気がして・・・。

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帰りがけの駄賃にキュウハ大滝でも見て帰るかって事になりました。
で、1050m付近で仕事道と別れ、四町四反沢出合へ降りる尾根に乗ります。

ここも自然林のなかなか良い尾根です。

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で、キュウハ大滝を見物。

この滝、好きな滝の一つ。高さは無いけど、迫力が有るんだよなァ。

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そして。以前M-Kさん達と探し当てたトラバース経路で帰ります。

ここを歩くのは3度目だけれど、だんだん崩壊が激しくなってきているように思う。
これだけ崩壊が進んでいると、キュウハ沢の巻き道としてのメリットも薄くなってきているかも。

この後は、本谷林道へ降りて。

林道をテクテクと歩き。

吊橋から長尾尾根を乗り越して。

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17時 無事に札掛に帰還しました。

駐車場で最後のヒルチェック。

吊橋から長尾尾根の間は、登山道でヒルを見かけたよ。
途中途中でヒルチェックしたから実害は無かったものの、何匹も取り付かれました。

もうここら辺にも晩秋まで来れないなァ・・・。

 

それにしてもようトラバした日だった。
トラバース祭りだった。

今となっては、物好きの極みに近くなってきたオバケ経路。
三角ノ頭まで通しで歩いた事を評価してくれる人は、とっても少ないかもしれない。
大半の人達にとっては、なんの意味も無い山歩きなのだろうと思う。

でも。僕的にはとっても大きな意味を持っているんだ。

今回の探険は大成功!!

・・・って事で。

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コメント

shiroさん
大変お疲れ様であり、ご苦労様でした。「ナニがよ~!」なんて言わないで下さいね。丹沢V探検隊の熱狂者であれば「思いの丈」は言わずもがなで皆共有してるのです。
メンバーの皆さんのガッツに驚きです! 気力、体力、素晴らしい・・。記録を読み、大日沢のパトロール、オバケ沢を上がって後半を右岸尾根で日高手前に出るルートを行きたくなりました。またよろしくお願いいたします。

投稿: M-K | 2012/05/28 01:37

shiro師 エンテイ情報ありがとうございます~

あれあれ!? オバケ沢の「芸術」エンテイが
「歯っ欠け」になっちゃった! と焦りました。
昨年と一昨年の豪雨で壊れたのか。。と思って
09年11月の写真を見ると、当時も欠けてたっぽいですね。
この写真で↓
http://file.harashiro.blog.shinobi.jp/0911151141.JPG
shiro師の背中、左上にガレがあって、これが
欠けた部分を埋めてただけだ、と。

ヒルの季節が終わったら、また参上しようと思います~

投稿: TI-AEK31 | 2012/05/28 06:47

あのガイドブックにここまで興味を持って下さるとは(^^)
さすがに見る所も違うのですね。
踏破おめでとうございます。

三角の頭から日高への南斜面は崩壊地だらけですものね。
少しでも経路の跡があれば、またウキウキです。
今回shiroさんの登られたもう一本崩壊地よりの尾根。
オバケ沢から三角の頭までの直登をずーっと狙っているんですが。

昨日は最高の天気と陽気でした。

投稿: レガー | 2012/05/28 20:03

M-Kさん、こんばんは。
去年、M-Kさん達と経路の探索をしていたので、割とスムーズに踏破する事ができました。
でなければ、径路痕を探してあっちウロウロこっちウロウロで、とてもじゃないけど1日で踏破する事はできなかったと思います。
 
オバケ沢堰堤から三角ノ頭へ登る尾根は、自然林と植林の混じった良い尾根でしたよ。なかなかの急登ではありますが・・・。三角ノ頭へ登る尾根は、どれも急登です。
大日沢はまだ踏み入れた事が無いんです。
あそこら辺をパトロールする時には、是非お声をかけてください。

投稿: shiro | 2012/05/28 23:11

TI-AEK31さん、こんばんは。
今気がつきましたが、今年は一つ減って31になったんですね。
これまた懐かしい写真を・・・
あれは2年前でしたかね。
久しぶりにこの石積堰堤を見ましたが、やっぱり迫力がある堰堤だな・・と思いました。
世附の巨岩石積とはまた違った、武骨な感じも良いですね。
きっとこの堰堤を作った技術者や作業員も、札掛からオバケ沢林道を歩いて現場に通ったんだと思いました。
 
>ヒルの季節が終わったら
遅い!
ヒルの季節が始まったばかりなのに、終わるまで待てませんよ。
早く丹沢へ復帰してください!!

投稿: shiro | 2012/05/28 23:23

レガーさん、こんばんは。
貴重な本を、長々とお借りしてしまって・・・。
本当にありがとうございました。
とても興味深く読ませていただきました。
 
>オバケ沢から三角の頭までの直登
崩壊地のすぐ東側の尾根を登った事が有りますが、痺れるような急登でした。でも、人の匂いがしない、よい尾根ですよ。
オバケ沢の1100m二又付近も、何度も訪れていますが、独特の雰囲気を持った場所です。
 
昨日もどこかを歩かれていたんですね。
僕は仕事でした・・・(涙)
ちょっとしばらくは仕事に追われそうな雰囲気です。

投稿: shiro | 2012/05/28 23:33

shiroさん、こんばんは。
おばけ径路がすべて通して歩けたのは私にとっては貴重でした。
古道についてはshiroさん程詳しくはないですが、昔を考えながら歩くのは好きです。
しかし、あそこまで原型とどめてない径路も沢筋に作られた径路の崩壊の早さを感じます。
日高に続く径路も気になりますが、とても濃厚な山行に参加出来て楽しかったです。
トラバースばかりで、まだまだ歩き慣れてない私にはヘトヘトでしたが、また機会があればどこかご一緒してくださいませ♪
ありがとうございました。

投稿: rae | 2012/06/03 20:55

raeさん、こんばんは。
オバケ経路を通して歩けたのは、僕にとっても貴重な経験でした。本当にありがとうございました。
 
それにしても崩壊が激しかったですねぇ。
本当に厳しいトラバースの連続、お疲れ様でした。
沢靴でのトラバースですから、さぞかし疲れた事だろうと思います。
 
古道については、決して詳しいわけではないんですよ。ただ、そこに古道があったと聞くと、一度歩いてみたくなってしまうんです。
『昔を考えながら歩く』の気持ち、よくわかります。そうなんですよねぇ・・・。丹沢には無数の古道や廃道、仕事道がありますから、興味は尽きません。
 
また、ご一緒に歩きましょう!

投稿: shiro | 2012/06/03 22:57

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